重陽の節句 菊花を楽しむ 2020.8.31 コラム, ブログ 五節句, 重陽, 重陽の節句 重陽の節句 菊花を楽しむとも藤 佐藤朋子 9月9日は菊花を楽しむ重陽(ちょうよう)の節句。菊に長寿を願います。今年、とも藤では「着せ綿」2種と茱萸嚢(しゅゆのう)を準備し、菊花酒を楽しむ為の盃を飾りました。 着せ綿は本来、真綿で色は白、赤、黄の3色を用意します。真綿(まわた)は蚕の繭からつくられた繊維で絹です。木綿が伝わるまで綿と言えば真綿でした。 とも藤では手芸用品店で購入した羊毛をつかって着せ綿風につくりました。1つは片木に並べ、もう1つは菊の花に被せます。被せるのは菊の夜露を真綿に移したもので顔や身体を拭うと長寿になると言われているからです。 重陽は五節句の中でも、正月(人日じんじつ)、上巳、端午、七夕にくらべて知名度の低い節句です。私も子供の頃は重陽を知りませんでした。菊の花に長寿を願う、菊花酒を楽しむというのはどちらかというと大人向きの節句のように思います。 数字には陰と陽があり、偶数が陰、奇数が陽です。1桁の数字で一番大きな奇数が9であり、9月9日は「陽の数字が重なる」ことからこの日の節句は「重陽」と呼ばれています。 「源氏物語」や「枕草子」にも重陽について書かれているように平安時代、宮中では儀式として貴族達によって様々に楽しまれていました。鎌倉時代以降一旦廃れたものの、宮中ではかわらず行なわれていたようです。江戸時代に正式に五節句の1つになると、菊を楽しむ節句として武家から庶民まで盛んに行なわれるようになりました。 江戸時代の重陽では「後の雛」として3月にしまった人形を虫干しもかねて再び飾ったそうで、近年この習わしを復活しようというムーブメントがあります。とも藤でもお雛様を飾っています。 さて、茱萸嚢についてもご紹介したいと思います。春先に咲く山茱萸(さんしゅゆ)という花があります。私はこの花が好きで、毎年楽しみにしています。優しい黄色の花です。 山茱萸は秋になるとグミに似た赤い実を付けます。この枝が中国では縁起が良いもので、茱萸嚢には赤い実がついたこの枝と菊の花を指し、袋のなかにはお香として「呉茱萸」を入れます。「呉茱萸」は漢方にも用いられ厄よけの意味合いもあります。平安時代には重陽の日の前日に御帳の柱に5月に掛けた真の薬玉と架け替えました。 あでやかな菊の魅力は人を惹きつけるものですが、若い頃にはあまりわからず、葬儀や法事などを連想する古めかしい花の印象でした。今では雛道具にたっぷりと描かれた菊を好み、菊の花弁が織りなす優雅な佇まいに胸がときめきます。